モニターの明かりだけが煌々と光っている薄暗い部屋の中、一人の女性がこじんまりと佇んでいる。彼女の見つめる先は何台もあるパソコンのモニター。そこに映し出されているのは――どこかのホテルであろうか、些か豪勢な場所に、黒いスーツを着た男性七人があちこちに映っている。その中の一人に彼女はマイク越しに声をかける。 「マックー、エレベーター降りて右」 「りょーかい。次は?」 「んっとー、……そこ左」 彼女の指示通りに『マック』と呼ばれた男性が動く。その姿から僅かな隙すら窺うことは出来ない。彼女はキーボードを操作しながら、小さく溶けた飴をがり、と噛み砕いた。 「向かって左側、奥から二番目の部屋にターゲットがいる模様」 「了解」 「……怪我、せんといてな」 「あほ。安心してそっから見ときーや」 モニターからは表情を窺うことは出来ないが、きっと彼は口元をにんまりと歪ませているのだろう。そう思った彼女は「はあい、」と気の抜けた返事を返した後、キーボードやマウスを忙しなく弄り始めた。するといくつもあるモニターが切り替わり、マックを除く残り六人の男性を映し出した。 「マックがターゲットに接近中。取り組み中のとこ悪いけど急いでー」 「こっからどう向かえばええん?」 「そこの階段のぼって右、突き当たりを右」 「了解」 「えー、もうちょっと遊ばせてーな」 「あかんよ、」 「今から向かうわー」 「トッポ、近くにエースおるから回収してきて。」 「まーだ遊び足りひんのか、」 「よろしくね」 「はいはーい」 「アーセナル、そこ右に曲がったらあかん。人うじゃうじゃ居るで」 「左か?」 「んー、そのまま真っ直ぐ。その次を左」 彼女の役目は七人を最短ルートでターゲットの元まで誘導すること。相手の位置、状況などを的確に伝えることである。暫くして全員が無事ターゲットの元へ到着したことを確認した彼女は、迷うことなくモニターの電源をぶつりと切った。 「ミッション、コンプリートッ!」 嬉しそうに声をあげた彼女――は、机の上に大量に並んだケーキの一つに手を伸ばした。 (110303) |