―――しゅるしゅるしゅる、

シュレッダーの紙を切る音で彼女の意識は浮上した。寝ぼけ眼で時計を見れば、世間一般的には活動が始まっている時間を指していた。そんなことはお構いなしに、もう一眠りしようと彼女が体制を整えようとした瞬間、「アー、セナルッ!」というガムの大きくどこまでも通るような声が響く。
今のガムの声で完全に眠気が吹き飛んだ彼女は一眠りすることを諦めたのか、のそのそとベッドから抜け出し、ゆっくりとしたスピードで身支度を始めた。



「…おはよー、」
「おはよう、。いつもより早いんやない?」
「……ガムの声で目ぇ覚めた」
「…あー、さっきのか、」



その場に居合わせていたジョニーは「ガムはいつでも元気やからな、」と苦笑いを浮かべる。ジョニーの言葉に彼女も苦笑いを浮かべながらカウンターに腰掛け、持ち出したケーキの箱を開いた。



「だーめ!ちゃんとご飯食べてから!」
「あっ!私のご飯!」
「ケーキはご飯やないっていつも言うてるやろ!…はい、これ食べて」
「はぁい、」



テーブルにサラダやトースト、スープなどが次々と並んでいく様子を見て、彼女は「おおっ!」と声を漏らした。以前から毎朝ケーキや善哉といった甘味しか食べようとしない彼女の偏食ぶりを心配して、ジョニーはよく注意を促すのだが改善の兆しは一向に見られない。これは言っても直らないと早々に判断したジョニーは、このような強行手段に出たのだった。
そんなジョニー手製の朝食を頬張る彼女の視線の先には、ダンボールに詰め込まれた書類と思われる大量の紙切れ。



「あーへあう、らいしへふん」
、ちゃんと飲み込んでから喋ろうな?」
「………アーセナル、何してるん?」
「…証拠隠滅?」
「昨日ジャンケン負けてもうたからね、」
「ほへー…」



彼女は食べるペースを変えず口をもごもごと動かしながら、昨夜の仕事の後始末か、と一人理解した。黙々と書類をシュレッダーにかけていくアーセナルを見て、彼女はにやりと意地悪そうに笑う。



「アーセナル、手伝おうか?」
「…条件は?」
「ケーキ五個!」
「…しゃーないなぁ、頼むわ」
「やった!」



いつの間にか朝食をぺろりと平らげていた彼女はジョニーに「ごちそーさまでした!」と告げると、もう一つのシュレッダーを取りに慌しく部屋へ向かった。そんな彼女の様子を見て、アーセナルは小さく微笑んだ。





(110414)