「成嶋さん、さん!木村さんはどうなりました?」
「落ち着け。まだ取調べもまだ続いているはずです。」
「そう、ですか…。」
「安心してください。まゆ子は何もやっていませんよ。」


成嶋の部屋に入るや否や、砂村がもの凄い勢いでまゆ子のことについて聞いてきた。それを宥めるような口調で彼女が話すと「そうですよね、木村さんがそんなことするはずありませんよね!」と力強く答えた。彼女はそんな砂村を見て安心した。まゆ子を信じてくれている人がちゃんといる。それだけで何故だか救われたような気持ちになった。


「それと分かったことがあります。」
「何ですか?」
「内通者はROMESメンバーの誰かです。」


いきなりのことで事情が掴めない砂村に、成嶋は簡潔に説明する。
何故深川秋子は危険を冒してまで貝田を助けようとしたのか。答えは簡単なことで、ROMESが貝田を追っていたことを知っていたから。そしてそのことを知っていたのは、ROMESメンバーだけ。つまりはその中の誰かが情報を漏らした、ということになる。


「そ、そんな…。」
「…信じたくはない話ですよね。」
さんも、内通者はROMESチームにいると…?」
「ここまで筋の通った話を聞いたら、そう思うしかないですよね。」


困惑する砂村をよそに、成嶋は砂村が今までやってきたROMESの解析結果を知りたがった。いまいち腑に落ちないような表情をしていた砂村だったが、成嶋に「早く、」と急かされると、渋々といった感じではあったがぽつぽつと話し始めた。


「映像を解析をしていたら、桜ヶ丘大学病院に突き当たったんです。」
「桜ヶ丘大学病院…。」
「とは言っても相手は病気の子供たちだったんで。」
「病気の子供たち“だった”……つまり、自分の目で確認してきたと。」


始めは「いいえ、」と否定していた砂村だったが、成嶋の強い口調に押され、桜ヶ丘大学病院に足を運んだことを認めた。「すみませんでした。」と謝る砂村に、成嶋は「二度とするな。」とぴしゃりと言い放った。
すると、今まで大人しくしていた彼女が急に砂村の両頬を横に引っ張り出した。容赦なく引っ張られているため、砂村の表情が痛さで歪む。


「い、いひゃいでふ!」
「砂村くんは一応重症なわけだから、見つかったら大変なんです。」
「…はい、」
「勝手に出ちゃダメです。」
「…う、」
「砂村くん、返事は?」
「わ、分かりまひは。」


何度も首を縦に振る砂村を見て、彼女はようやく手を離した。彼女に引っ張られたせいで砂村の頬は若干赤くなっていた。しゅんと落ち込む砂村に、彼女はさっきとは打って変わって優しい口調で「砂村くんは行動派ですからね。自分の目で確かめなきゃ気が済まないんですよね?」とふんわりと微笑みながら問う。そんな彼女を見て、砂村は心臓がとくんと音を立てたのが分かった。


「砂村、」
「な、成嶋さん…。」
「煮詰まってるなら、もう一度データを洗いなおしたらどうですか。」
「…はい、」
「それと、顔赤いですよ。」
「え、」


砂村がおそるおそる成嶋を見ると、成嶋は冷ややかな目で砂村を見ていた。その突き刺すような視線の痛さに砂村は恐怖を覚えたのだった。





(091211)(嫉妬なのか、そうなのか。